就活生の約3割、参加した会社説明会は「全てオンライン」開催だった。コロナ禍で企業の新卒採用活動に変化

~オンラインに抵抗のない就活生、ツールへの順応が高く、初見で戸惑ってもすぐ慣れる~

サマリー

  • コロナ禍の会社説明会、「全てオンライン」(28.1%)が「全て対面式」(23.3%)を上回る結果に
  • 会社説明会の満足度は? オンラインは3.79点、対面式は3.90点
  • 初めてのツールに戸惑うことはあっても、すぐに慣れるデジタルネイティブ世代
  • 面接の満足度は? オンラインは3.63点、対面式は3.82点
  • オンライン面接では表情を読み取ることが難しく、言いたいことが伝わっているか不安

調査概要

コロナ禍の影響により、新卒社員を採用する側である企業にとっても、採用される側の学生にとっても、期せずして新卒採用選考のオンライン化を迫られるようになりました。

スマートフォンを当たり前のように使いこなす若い世代にとって、アプリや機器の操作は決して難しいことではありません。しかしながら、そんな就活生たちにとっても、実際にスマホなどを活用して説明会に参加したり、オンラインで面接を受けたりすることは初めての経験です。

オンラインでの選考は感染予防には効果があった一方、回線接続不良など、オンラインならではの問題も露見しました。直接顔を合わせての対面式と比較して、どんな良い点、 どんな 悪い点があったのでしょうか。

DX関連の情報をお伝えする当サイト「まるごとDX」は、2021年4月入社に向けて、2020年4月~2021年3月に就職活動を行った新社会人を対象に調査を実施。オンライン説明会や面接の満足度、ツールの使用感、評価した点や不満に感じた点など、オンラインによる企業の採用選考について、就活経験者の声を集めました。

調査結果

コロナ禍の会社説明会、「全てオンライン」(28.1%)が「全て対面式」(23.3%)を上回る結果に

2021年春の入社に向けて、2020年4月~2021年3月に就職活動を行っていた2020年度就活生146人に、就活の際に自分が参加した会社説明会/面接/内定式について、どの程度が「オンライン」開催だったか、直接顔を合わせての「対面式」開催だったか、それぞれの割合を答えてもらいました。

参加した会社説明会について「全てオンライン」開催だったと答えた人は28.1%、「全て対面式」開催だったと答えた人は23.3%でした。説明会については、「全てオンライン」が「全て対面式」を4.8ポイント上回っています。

面接について「全てオンライン」だったのは21.9%、「全て対面式」だったのは24.7%と、「全て対面式」が2.8ポイント多い結果となりました。

内定式については「全てオンライン」開催だったのは26.7%、「全て対面式」開催だったのは38.4%と、説明会や面接に比べて全て対面式で行う企業の割合が高くなっています。

会社説明会、面接、内定式のどれも「全てオンライン」の比率は2~3割程度ですが、全体的に見るとオンラインの割合の方が、対面式より高いことが分かります。

Q. オンライン説明会、オンライン面接、オンライン内定式の比率はどうでしたか?(n=146)※必須回答

会社説明会の満足度は? オンラインは3.79点、対面式は3.90点

会社説明会について、それぞれオンラインと対面式での「経験がある」と回答した人にその満足度を5点満点で評価してもらいました。

平均で見ると、「オンライン説明会」の満足度は5点満点中3.79点、「対面式説明会」は0.11ポイント上回る3.90点となりました。わずかながら対面式の満足度が高くなっています。

それぞれの回答率の分布をグラフで見てみると、「オンライン説明会」では5点(28.3%)と評価した人が「対面式説明会」(24.6%)に比べて3.7ポイント多い一方で、1点(3.3%)、または2点(7.5%)と低く評価した人も「オンライン説明会」の方が「対面式説明会」より多くなっています。

Q. オンライン説明会、対面式説明会の満足度は?(オンライン説明会 n=120、対面式説明会 n=126)※必須回答

初めてのツールに戸惑うことはあっても、すぐに慣れるデジタルネイティブ世代

就職活動においてオンライン説明会の「経験がある」と回答した120人に、説明会自体の評価、さらに使用したツールについて良かった点や悪かった点をそれぞれ自由回答で答えてもらいました。

まずは、オンラインで行った説明会についての回答です。

移動時間や交通費、宿泊費などの経費がかからなかったことは就活生にとって大きな利点だったようです。移動がない分、多くの会社説明会に参加できたという回答もありました。

コロナ感染を避けてのオンライン化でしたが、就活生にとっては予想外のメリットだったのではないでしょうか。

また、デメリットとして最も多かったのが、ネット環境や回線が不安定な場合に接続に支障がある点でした。

Q. オンライン説明会に対するあなたの評価は?(n=120)

  • 回線が悪く、画面が固まったりパワーポイントが表示されなかったりしていた。ただ、交通費など経費がかからなかった点はとても良かった。
  • 便利だった。質問はしづらかったが、会場に行く手間が短縮された分、企業研究など他のことに時間が使えた。
  • 地方から都心に行くまでの時間と交通費が不要になったので、非常に助かった。
  • 移動がない分、数を受けることができた。資料の提供があり、後で見返すことができて良かった。
  • 職場の実際の雰囲気などが分かりづらいところは不便。交通費などがかからないところが良い。
  • 会社側のネット環境が悪く、ほとんど聞き取れなかった。
  • 足を運ぶことなく便利だと思うが、会社側の準備や進行がいまいちだった。どのタイミングで発言していいのか、直接対面するよりも場の空気が分からなかった。
  • コロナウィルスが怖いので安心して参加できた。
  • オンデマンド形式のものは会社の雰囲気が掴みにくかった。
  • 移動時間が必要ないため、たくさんの企業のオンライン説明会に参加できた。
  • 想像していたより便利だったけど、準備が慣れなくて大変。
  • 便利だったが、緊張感がなく集中できないことが多かった。動画を残さない企業よりも、残してくれる企業の方が良い印象を持った。
  • 同じ空間にいるわけでない分、質問や発言がしづらかった。画面越しだと会社の雰囲気が伝わりづらく不便に感じた。
  • 家にいながら説明会に参加できるところは楽ではあるが、環境が変わらないことによる緊張感の欠如や、通信環境によっては映像が乱れたり音声が上手く聞き取れないことがあったので、あまり好きな方法ではなかった。
  • 移動がないので気楽に、多くの企業の説明会に参加できる。質問もコメント式だと対面よりもむしろ聞きやすい。

続いて、オンライン説明会で使用したツールについての評価を聞きました。

初めてのツールだったり、ツールの操作が複雑な場合に戸惑ったものの、すぐに慣れたという意見が多く見られました。チャット機能のおかげで質問しやすかった、本名を表示しない機能があると個人情報が守られるといった、経験者ならではの意見もありました。

Q. オンライン説明会で使用したツールに対するあなたの評価は?(n=120)

  • 初めて使うアプリは時間がかかるが、2度目は難なく使えた。
  • 学校でも使っていたツールでもあったので、使い慣れていた。
  • 初めて使うツールを指定されて戸惑った。
  • コメントを打ちづらかった。
  • チャット機能がとても便利だった。
  • 操作が多いツールの場合、戸惑いがあった。
  • 思った以上にスムーズにできて使いやすいが、気づかないうちにミュートになっていたことでコミュニケーションがうまくいかないときがあった。
  • チャット機能があると気軽に質問ができて良い。一時停止や巻き戻し機能があると便利だと思う。
  • zoomは授業でも使うことが多かったため使いやすかった。それ以外のツールだとあまり慣れていなかったこともあり、戸惑ってしまうシーンも多かった。
  • 自分の本名を表示する必要がないツールだと、スクショされたり、プライバシーを侵害される心配がなくて良い。
  • 授業でも使っていたzoomでのオンライン説明会だったので、不安なく使うことができた。

面接の満足度は? オンラインは3.63点、対面式は3.82点

面接について、それぞれオンラインと対面式での「経験がある」と回答した人にその満足度を5点満点で評価してもらいました。

平均で見ると、「オンライン面接」の満足度は5点満点中3.63点、「対面式面接」は0.19ポイント上回る3.82点となりました。説明会同様、面接でもわずかながら対面式の満足度が高くなっています。

それぞれの回答率の分布をグラフで見た場合に、「オンライン面接」では5点(26.9%)と評価した人が「対面式面接」(23.4%)に比べて3.5ポイント多い一方で、1点(5.0%)、または2点(10.9%)と低く評価した人も「オンライン面接」の方が「対面式面接」より多くなっています。

Q. オンライン面接、対面式面接の満足度は?(オンライン面接 n=119、対面式面接 n=124)※必須回答

オンライン面接では表情を読み取ることが難しく、言いたいことが伝わっているか不安

2020年度の就職活動においてオンライン面接の「経験がある」と回答した119人に、面接自体の評価、さらに使用したツールについて良かった点や悪かった点をそれぞれ自由回答で答えてもらいました。

まずは、オンラインで行った面接についての回答です。

説明会同様、面接においても移動時間や経費がかからない点は就活生にとって有利だったようです。面接では説明会よりも会話をするシーンが多いため、相手にきちんと伝わっているか不安に感じたという意見が多く見られました。同じく、視線の位置が定まらない点、若干のタイムラグにより喋りづらさを感じた点なども不満としては多かったようです。

Q. オンライン面接に対するあなたの評価は?(n=119)

  • 相手の声が遅く聞こえたり、聞こえない時があり少し大変だった。
  • 相手側もオンラインであることを考慮し、気遣ってくれたのでやりやすかった。
  • カメラを見て発言しないといけないため、相手の表情が見れず融通が利かなかった。
  • 多少のラグが生じたが、伝えたいことは伝えられたと思う。移動時間がないので快適だった。
  • 相手の目を見ようとするとカメラに目線を向けられず、カメラに目線を向けたら面接官の顔を見ることができなかった。慣れた環境で面接を受けることができたのはとても良かった。
  • 交通費がかからなかった点とスケジュールの調整がしやすかった点が良かった。
  • 相手側に声が届いているのか不安だった。
  • 相手に本当に伝わっているのか分からない。
  • カンペを用意できるので言いたいことを言える。
  • 家族が多く、自宅で環境を整えるのが難しかった。
  • 緊張が緩和されたが、面接官の表情等が読み取れず不安になることがあった。
  • 相手の様子があまり分からず緊張した。面接場所の近くで美味しいご飯を食べるのを息抜きにしていたので、できなくて辛かった。
  • 家であっても、緊張はいつもしていた。さらに面接に対する緊張だけでなく、通信環境の影響で映像や音声に不具合が起こらないか常に心配していたため、余計に緊張してしまった。
  • 初対面の人とオンラインで話して自分らしさを伝えるのは難しいと思った。
  • 交通費がかからないことは助かったが、自分の気持ちがしっかり伝わるのかが心配だった。
  • 相手の細かい表情や雰囲気の変化が読み取りにくく、自分のも読み取ってもらいにくい。
  • 背景をどこにするかや、自宅内でWi-Fiの届きやすい場所を探すのが大変だった。

続いて、オンライン面接で使用したツールについての評価を聞きました。

ツールの操作性については、戸惑うことがあっても使っているうちに慣れてしまうようで、そこまで大きな問題として認識はされていませんでした。

Q. オンライン面接で使用したツールに対するあなたの評価は?(n=119)

  • ツールは分かりやすい時と、その会社独自のツールで分かりづらい時があった。
  • 使用したことがあるツールが多かったため、使い方が分からないということは無かった。
  • 難しい操作はなかったので特に問題なく利用できた。
  • 授業でもzoomを使っていたので使い方は大丈夫だった。
  • 使い慣れたツールだったのでスムーズに面接ができた。
  • セキュリティ面が心配。
  • 途中でツールが使えなくなってしまい、その後電話で面接をした。
  • 特に使い方が分からないこともなく、問題なかった。
  • 何度か使用したことがあるもので操作は問題なかったが、タイムラグ等が気になった。
  • 使い慣れたツールだと安心していたが、使ったことのないツールだと非常に戸惑った。
  • 面接までに何度か使っていたので分かりやすかった。
  • 何回か使ううちに慣れていった。

調査手法

調査期間:2021年7月16日~22日
調査対象:2020年4月~2021年3月に就職活動を行っていた2020年度就活生 146人
調査方法:インターネット調査

まとめ

2020年度の就職活動において、オンラインでの会社説明会や面接は突出して多くない一方、全てオンライン化した企業も2割ほど存在していたことが分かりました。4度目の緊急事態宣言下での就活が進む現在、2020年度に比べてさらに就活のオンライン化は進んでいることが予測されます。より多くの企業が、採用選考過程にオンラインを採り入れていることでしょう。

就活生たちは、携帯電話を持つようになったころには既にスマートフォンが普及していた世代です。オンラインへの順応は負担にはならないことでしょう。初めてのツールでも、すぐに慣れ、使いこなすことができるようです。オンライン説明会や面接での使用ツールはzoomが多かったようですが、授業などで使い慣れていたおかげか「操作が分からない」「難しい」といった不満はあまり多くありませんでした。

ただ、「面接官と目線を合わせづらい」「本名の画面表示は個人情報の観点で不安」「一時停止や巻き戻し機能がほしい」「セキュリティ面が心配」といったオンライン就活経験者ならではの声も上がっていました。こういった問題に関しては、説明会や面接に特化した機能を持つツールを使うことで解消することができるでしょう。

突然のコロナ感染症の拡大を受け、2020年度は多くの企業が会社説明会や面接を急きょオンライン化したことで、準備が十分でなかった側面もありました。

就職活動のオンライン化はまだまだ過渡期ですが、たとえコロナ禍が終息を迎えたとしても、完全に対面式のみに戻ることはもうないのかもしれません。近い将来、オンライン就活が当たり前になる可能性も十分にあるのなら、いち早くオンライン就活に対応し、オンラインでの新卒採用活動をブラッシュアップしていくことこそ、今、企業に求められていることなのかもしれません。