Uターン/Iターンを増やすには――効果的に促進させる方法を考える

大都市に住む人々を、地方に誘引して住んでもらい、地方活性化につなげたいと考える関係者は多いでしょう。コロナ禍により、テレワーク推進の流れができ、その結果地方移住に実現性が高まってスポットが当たりやすくなったことは、地方活性化にとってはチャンスともいえます。

UターンやIターンの促進は、地方の活気を取り戻す施策として、重要なものの1つです。ただ、効果的な施策を実施するには、実際にUターン/Iターンをした、もしくは今後したいと考えている予備軍の人の背景や動機などを把握する必要があります。今回は、これらについて具体的に解説していきます。

Uターン、Iターンとは

大都市から地方に移り住むことをUターン、Iターンと呼びます。これに加え、Jターンという呼称も使われるようになってきました。それぞれの意味は以下となります。

Uターンする矢印

Uターン

本来は道路上でこれまでの進行方向とは正反対の方向に転回することを指す言葉です。これが、地方への移住に対しては、生まれ育った地域から都市部へ移住した人が、再び生まれ育った地域へ戻ることを指す言葉として使われています。

Iターン

Iターンは、元々都市部で生まれ育った人が、地方へ移住することを意味します。特に縁やゆかりがあるというわけではなく、その地方に何らかの魅力を感じて移住することが特徴です。

Jターン

地方出身の人が、一度都市部に移住した後に、再び地方に移住するのがJターンです。Uターンと一見して流れは同じように見えますが、戻る移住先が故郷と同じ都道府県や近隣の都道府県の地方都市であるところが異なる点です。

Uターン、Iターンを促進するには、Uターン予備軍の人物像を知ろう

Uターン、Iターンで地方活性化を目指すのであれば、まずどのような属性の人がUターン、Iターンを選択することが多いのかを知っておくことが肝要です。これがわかることで、既に実行しようとしている人はもちろんのこと、潜在的な予備軍の人を喚起しやすくなるので、さまざまな角度からの需要を把握しておきましょう。ここでは、代表的な予備軍の人物像について紹介します。

都会の暮らしにストレスを感じている人

都会での暮らしは便利な半面、人の多さ、道や建物の狭さ、生活費の高さなど都会特有のストレスを感じる部分が多くあります。仕事面においても、満員電車での通勤、同僚や上司などとの関係性や出世競争など、人が多い分それだけストレスを感じる場面が増えてしまうことがあります。

2017年に、電通が全国の実際のUターン移住者約1700名に調査した結果によれば、Uターンを決意したきっかけで一番多かったのが、この都会でのストレスによるものでした。都会で働いたり暮らしたりすることに疲れた人が、人が少なく、自分のペースで暮らせそうと考えUターン、Iターンを検討する傾向があるようです。

スマホを見ている女性

子育てにふさわしい環境を求めている人

自然環境豊かな地域で、スペースに余裕のある家で子育てがしたいと考え、Uターン、Iターンを検討する家族は多いと思われます。また、Uターンであれば、実家の両親(もしくは義両親)を頼ることができるため、子育てにおける不安も解消できます。このことをメリットと感じ、Uターンを選択する夫婦もいます。

子どもと遊びながら肩をマッサージする女性

新天地で仕事をしたい人

都市部での仕事に行き詰まりや人間関係の悩みなどを感じて、いっそのこと気分一新して新天地で仕事をしたいと考える人が、Uターン、Iターンを選択することもあります。

考え事をするスーツの男性

実家に戻りたい人

Uターンを選択する人の中には、一人暮らしを止めたい、慣れ親しんだ地元で暮らしたい、両親の介護が必要になったなどのさまざまな理由で、実家に戻る人もいます。総務省が発表している「地域への人の流れに関するデータ」によれば、Uターンした人の理由の第1位が、実家に戻るためとなっています。どうしても孤立しやすく、何か困ったときの援助も受けにくい一人暮らしよりは、実家で生活するほうが安心感を得やすいでしょう

色鉛筆で描かれたおじいちゃんとおばあちゃん

ワークライフバランスを大切にしたい人

首都圏において、特に東京で勤務する人の中には通勤時間が片道1時間~2時間以上になる人が多くいます。通勤時間を含めれば、1日の大半を労働時間に割いてしまい、ワークライフバランスが取れない生活を送ることとなってしまいます。その点、Uターン、Iターン先では、職場の近くに住んでも、東京ほど家賃や固定資産税が高くなることは考えられません。

職場の近くに住めば、その結果通勤時間の大幅な削減が可能となります。これが、ワークライフバランスの実現につながるため、ワークライフバランスを大切にしたい人にはUターン、Iターンは大きな魅力となるのです。

実際に、総務省の「地域への人の流れに関するデータ」によれば、Uターン後通勤時間、労働時間はUターン前に比べて減少し、自分の時間を増やすことができた人が多くなっています。

ジオラマ人形とライフプランの文字

Uターン、Iターンのメリット&デメリットを踏まえ、促進策を考えよう

地方に住むことには、明確なメリットとデメリットが存在します。これらをはっきりさせることで、魅力を発信しやすくなり、問題点を改善させやすくもなります。ここでは、メリットとデメリットを紹介していきます。

地方に住むことのメリット

地方に住むことのメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • 自然環境が豊か
  • 住居費の負担が減少し、しかも都会に比べて広々とした住居を確保できる可能性が高く、精神的な余裕も生まれる
  • 通勤時間、労働時間の減少によるワークライフバランスの実現が見込める

都会にはないもの、得られないものが地方にはあるというメリットをうまく伝えることができれば、魅力を感じた予備軍の人々を呼び込める可能性が高まります。

木漏れ日が美しい一本道

地方に住むことのデメリット

他方で、地方に住むデメリットもいくつか存在します。代表的なものを以下に列挙します。

  • 交通インフラが整っていない地域では、マイカーもしくはバイクが必須となる
  • 仕事が少なく、希望する業種・職種に就けない可能性がある
  • 娯楽や医療機関も脆弱であり、生活に支障をきたすことがある
  • 近隣や自治会などによっては、人間関係が濃密になることもあり、それがストレスになることも

これらをUターン、Iターンを実行する際の障壁と感じ、二の足を踏んでいる予備軍の人々もいるかもしれません。課題をいかに解決し、解決が難しい事柄は説明を重ねていくかが鍵となるでしょう。

公園のベンチでパソコンを開くスーツの女性

地方移住に対する意識の変化

前述した地方に住むデメリットは、各人の考え方や意識などでメリットにもなり得ます。たとえば、地域に貢献して暮らしたいと考える人は、近隣や自治会などと関係を深められる土壌があるほうがメリットに感じるでしょう。また、昨今興隆が見られるテレワークには、インターネット環境が必要不可欠です。これらをより整備することで、テレワークをUターン、Iターン先で行いたいと考えている予備軍の人々へのアピールポイントとなります。

さらに、インターネット環境がより強靭になれば、地方が抱えるデメリットをインターネットからのアプローチで解決できることも少なくありません。そして、強靭なインターネット環境を基盤として、さまざまな分野でDXを推進することで、地方活性化を実現できる可能性が高まるでしょう。