「誰一人取り残さない持続可能な社会の実現」を目標に掲げるSDGs(エス・ディー・ジーズ)が、日本でも広く知られ、さまざまな取り組みが行われるようになってきました。日本政府も2030年の達成年限を目指し、官民を挙げた推進体制を構築していますが、SDGsと地方創生の取り組みを連携させて地方の活性化を図ろうと設立されたのが「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」です。
ここでは地方創生SDGs官民連携プラットフォームがどのような活動をする組織で、活動に参加するにはどうすればいいのかを解説します。
地方創生SDGs官民連携プラットフォームの基礎知識
地方創生SDGs官民連携プラットフォームは、2018年に内閣府がSDGsの達成に向けた取り組みを地方創生につなげるために設立しました。内閣府は目的、趣旨について次のように記しています。
内閣府では、SDGsの国内実施を促進し、より一層の地方創生につなげることを目的に、広範なステークホルダーとのパートナーシップを深める官民連携の場として、地方創生SDGs官民連携プラットフォームを設置しております。(“地方創生SDGs官民連携プラットフォーム |地方創生SDGs・地方創生SDGs官民連携プラットフォーム・「環境未来都市」構想(内閣府)”)
続いてプラットフォームの概要や、SDGsと地方創生の関係について説明しましょう。
地方創生SDGs官民連携プラットフォームとは
地方創生SDGs官民連携プラットフォームは、民間企業や研究機関、国、地方自治体が連携してSDGs事業を推進していくことを目的にしています。設立総会で公表された設立趣意書にも次のように記載されています。
我が国におけるSDGsの国内実施を促進するためには、地方自治体及び地域経済に新たな付加価値を生み出す企業、専門性をもったNGO・NPO、大学・研究機関等、広範なステークホルダーとのパートナーシップの深化、とりわけ官民連携が必要不可欠です。(“地方創生SDGs官民連携プラットフォーム設立趣意書”)
つまり、SDGsの取り組みで地方創生を進め、地方を活性化させるには、自治体と民間企業、研究機関、NPOなどの力を結集することが必要で、互いに協力相手を求め、連携を強化していく場となることが、プラットフォームの役割なのです。
SDGsに興味があり、施策推進のパートナーを探し求める企業・団体のいわばマッチングサイトといえるでしょう。SDGsに関心のある企業・団体であれば登録が可能で、会員はマッチングのサポートを受けられるほか、イベント情報を発信したり、受け取ったりできるようになります。興味のあるテーマや課題が見つかれば、分科会に参加したり、新たな分科会設置を提案したりすることもできます。
SDGsと地方創生SDGsとは
SDGsについて改めて説明しておきましょう。2015年の国連サミットで採択された世界的な取り組み目標で、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。
SDGsには17のゴールに基づく169のターゲットが掲げられ、貧困・飢餓の解決や、ジェンダーや国の違いによる不平等の解消、福祉・教育の推進、自然環境の保護、気候変動への具体的対策など幅広い分野について、具体的な達成基準が設けられています。
一方で、地方創生とは、超高齢化と人口急減という課題を抱える中、各地域が特色を生かして自律的で持続的な成長を続けられる社会を目指す国の取り組みです。地方創生にSDGsの理念を取り入れ、地方自治体が民間企業や研究機関、NPOなどと協力して取り組みを進めていこうというのが地方創生SDGsです。
地方創生SDGs官民連携プラットフォームの入会方法と既存会員
地方創生SDGs官民連携プラットフォームは、SDGsに関心のある自治体、企業、研究機関、各種団体であれば、いつでも入会できます。
プラットフォームへの入会方法や参加会員について説明しましょう。
地方創生SDGs官民連携プラットフォームの入会方法
地方創生SDGs官民連携プラットフォームに入会できるのは、法人格を持つ団体のみで個人単位での参加はできません。原則として団体全体での入会となりますが、民間企業であれば地方の支社、支店、営業所ごとの入会も可能で、大学であれば研究室単位でも参加できます。
申し込みに期限はなく、いつでも入会申請ができますが、提出書類に基づいて審査が行われ、幹事会で承認されれば入会が認められます。
入会申請は簡単で、Web上の入会申請フォームに団体名や業種、連絡先を入力し、アンケートに回答したうえで、誓約書を提出するだけです。記入する内容は、次の通りです。
地方創生SDGs官民連携プラットフォーム 入会申請Webフォーム入力内容
入会申請フォームに記入する前に、誓約書をダウンロードして、必要事項を記載、署名しなければなりません。それをスキャンして入会申請時にアップロードします。
申請内容を確認し、誓約書の準備ができたら、入会申請フォームを開いて入力します。入会申請フォームは、次のサイトから進めます。
地方創生SDGs官民連携プラットフォームの既存会員
地方創生SDGs官民連携プラットフォームには2021年12月末現在、6183団体が入会しています。会員は1号会員から3号会員までの3種類があり、公共団体と民間団体で分けられています。
1号会員
都道府県や市区町村などの地方自治体が1号会員です。47都道府県をはじめ全国で1034団体が参加しています。最も会員が多い都道府県は北海道で79団体が入会しています。
2号会員
2号会員は国の行政機関です。内閣府をはじめ、防衛省を除く各省と金融庁、消費者庁、警察庁など16機関が参加しています。
3号会員
企業や大学、研究機関、NPO、NGO、各種団体など民間団体はすべて、3号会員となります。
NTTグループ会社やNECグループ会社などIT関連企業や、ファミリーマートやローソンなどのコンビニエンスストア、全日空、JR東海など旅客会社などの大手企業をはじめ、さまざまな業種の会社が参加しています。
参加団体はすべて合わせて5133団体にのぼります。
地方創生SDGs官民連携プラットフォームに入会するメリット
地方創生SDGs官民連携プラットフォームに入会すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットを3つ紹介します。
1.情報収集・発信の促進
地方創生SDGs官民連携プラットフォームに参加すると、SDGsに関するさまざまな情報の配信を受けられるほか、自分たちから情報発信もできます。情報の発信は主にメールマガジンで行われ、会員が主催するイベントなどの情報がメルマガで各会員に送られます。
対外的な情報発信としては、SDGs関連のイベントを開催する際には、後援として「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」の名義を使用でき、ロゴマークでSDGsの取り組みであることを広くアピールできます。
ロゴマークは会員のWebサイトや名刺などにも使用が可能です。
2.マッチング機能の利用
地方創生SDGs官民連携プラットフォームでは、地方創生やSDGsに通じる課題を抱えている課題がある会員と、課題解決につながる製品やサービス、技術、ノウハウを持つ会員が出会える機会を設けています。
会員が集まり、情報交換などができるマッチングイベントや官民連携セミナーなどのイベントを随時開催し、会員同士の交流から課題解決につなげています。また、解決したい課題のある会員が、リクエストシートを提出すれば、事務局がホームページ上で課題を公開。他の会員から解決策の提案を受け付けた事務局がマッチングを行います。
3.分科会への参加・開催
地方創生SDGs官民連携プラットフォームでは会員の提案に基づいてさまざまなテーマの分科会が設置されています。共通する課題の検討や異分野の連携、経験やノウハウの共有といった活動を目的としており、興味や関心のある分科会に自由に参加できます。
地方創生SDGs官民連携プラットフォームの事例
地方創生SDGs官民連携プラットフォームを通じて、多くの官民連携の取り組みがスタートしています。事務局では2021年、優良事例を選考するため、会員から取り組み事例を募集。寄せられた事例をホームページで公開し、会員から投票を募りました。
投票で選ばれた優良事例は2022年1月中旬に発表される予定ですが、応募のあった取り組みの中からいくつか事例を紹介します。
KDDIスマートドローンを活用した伊那市ドローン物流サービス
岐阜県伊那市がKDDIと連携して2018年から取り組んでいる全国初の自治体運営によるドローン配送事業です。ケーブルテレビで注文した日用品をドローンで山間部に配送し、買い物が困難な住民を支援しています。
KDDIの先端技術「スマートドローンプラットフォーム」が活用されています。
廃棄されていた災害発生土砂を建設資材として資源化
2012年の九州北部豪雨災害で発生した大量の土砂を処分するため、工事現場で排出される土砂をセメントなどで固める「ソイルセメント」技術を持つインバックス(さいたま市)が熊本県とともに集中プラントを設営。土砂の処分と、復旧のためのコンクリート不足という2つの課題を解決しました。この方式は2016年の熊本地震でも採用されています。
保育園の児童らがオンラインで世界交流とSDGs学習
幼稚園や保育園の園児らを対象としたオンライン海外交流サービス「EN-TRY(エントリー)」を提供しているスタートアップ企業シンクアロット(東京都渋谷区)が、高知県土佐町のみつば保育園で、園児らが世界中の人たちとオンラインで交流する「みつばせかいプロジェクト」を展開しています。
人口4000人の中山間地域である土佐町で、都会に劣らない国際的な質の高い教育を提供することが目標です。