自治体のDX(デジタル・トランスフォーメーション)が、社会的な課題となっています。長引くコロナ禍で、満を持してデジタル庁が発足。DXが国を挙げた合言葉になっているのは、すでに皆さんご存じでしょう。なかでも、自治体のデジタル化で行政手続きが効率化し、自治体だけでなくそこに暮らす人々にまで、大きな変革(トランスフォーメーション)が及ぶことが期待されています。
自治体DXを成功に導くポイントは、デジタルに知見のある人材の登用にありますが、そもそも地方は慢性的な人材不足であり、DXを推進できる人材の確保は難しいといわれています。
この記事では、自治体のDX化を検討中で、自治体DXを推進するための人材育成や確保、研修方法について知りたい方々に向けて情報を提供します。
具体的には、
- 自治体DXの人材の育成や確保には、どのような方法があるか?
- 自治体DXにおける人材登用には、どのような事例があるか?
- 自治体DXを支援する民間企業はどのようなサービスを提供しているか?
を紹介していきます。
自治体DXを成功に導く人材を確保する、2つの方法
「自治体DX推進手順書」をご存じでしょうか? デジタル庁が2021年9月に発足したのに先だち、同年7月に総務省が公表しました。この手順書のなかから、自治体DXを成功に導く人材確保のヒントを紹介します。
自治体の人材不足を補う解決策とは?
自治体DXの人材確保について紹介する前に、地方自治体の人材不足の現状を確認しましょう。
自治体の未来をAIで予測すると、2045年には必要な人材の60~80%しか地方公務員を確保できないといわれています。その一方、DX化など時代に合わせた改革を推進する地方自治体には、UターンやIターン含めて求人が殺到しているという報道もあります。
この例でもわかるとおり、慢性的な人材不足を嘆くばかりではなく、自治体みずからがデジタル化による変革に前向きな姿勢を見せれば、優秀な人材の確保は不可能ではありません。
自治体DX化のための人材確保の方法には、次の2通りとなります。
- 職員研修:自治体内部で人材育成を図る方法
- 外部人材の登用:デジタル専門人材派遣制度など、外部人材を招き入れる方法
自治体DXを成功に導く、職員研修
自治体の内部でDXに強い人材を育成するには、中長期な視点から体系的に職員研修を行うことが推奨されています。
DXにおけるゴールを職員ごとに明確に定めることが大切です。たとえばDX推進部門の職員に求められるスキルと、一般職員に必要なスキルは異なります。研修1つとっても、それぞれに応じた学びの機会を提供することが求められています。
自治体のなかには、DXのスペシャリストとなる人材には情報処理技術者試験などの国家資格を、一般職員にはITパスポート試験などの資格取得を奨励し、さらに受験料や教材費も自治体が負担しているところもあります。
自治体DXを成功に導く、外部人材の活用
自治体DXを推進するには、自治体内部で研修を行う人材育成方法と並行して、外部からプロフェッショナルを採用する方法も提唱されています。それが、「デジタル専門人材派遣制度」という国の制度です。
自治体に対して、民間企業が行政のデジタル化を推進するための専門的な人材を派遣するという仕組みです。派遣期間は最長2年間。自治体でDX化を推進するにあたり急務となる人材不足を即座に解決できるところが魅力となります。
人材を外部から雇用する形式はさまざまですが、派遣された人材は民間企業に所属しながら、週に何日かは自治体の業務に出向するというスタイルが一般的です。
自治体DXを成功に導く人材を確保した事例
ここからは、自治体の職員に研修を実施した人材育成事例と、外部の人材を招いた自治体の成功事例についてご紹介します。
自治体DXを成功に導く職員研修-栃木県
栃木県では自治体DX支援に実績のある民間企業と連携し、役職ごとに異なる研修を、県内の市や町を巻き込んで取り組みました。
決定権のある幹部職員には、DXに対する気づきを促すセミナーを開催。一般職員には、県、市町ともにDXに向けたマインドセットを習得するための研修動画を視聴してもらいました。そして、実際にDXを推進する専門家を育成する人材研修では、課題解決に向けたワークショップを実施したのです。
自治体の役職ごとに適切な研修を企画したり、県だけでなく市町も巻き込んで研修を行ったりするなど、DX化に向けたきめ細かな対応が注目を集めました。
自治体DXを成功に導く、外部人材の活用-島根県美郷町
自治体DXに取り組む島根県三郷町は、「デジタル専門人材派遣制度」を活用。2020年12月に、NTT西日本と地域活性化を目的にした協定調印を行いました。NTT西日本の人材を、DX推進部門の課長補佐というポジションで2年間受け入れたのです。職員はNTT西日本に在籍しながら、通常は自治体でフルタイム働くことになります。外部の専門家が1人入ることで、DX研修を受けている自治体職員にも良い刺激を与えることでしょう。
美郷町は中山間部に位置する緑豊かな地域で、人口減少によるJRの廃線など、根本的な人材不足の問題を抱える自治体でした。今回の民間との連携で、タッチパネル式の端末を活用した遠隔医療や、ドローンを活用した買い物支援など、住民の暮らしが便利になるDXの実現に向けて一歩ずつ前進しています。
自治体DXを成功に導く、外部人材の活用-滋賀県長浜市
自治体DXを実現するため、「デジタル専門人材派遣制度」を活用した滋賀県長浜市は、デジタル戦略のマネジメントを担う人材を、自治体向けシステムを手掛けるGcomホールディングスに委嘱しました。
職員に向けて、GcomのDXフェロー(DXについてアドバイスができる有識者)が研修を実施。「行政のDXとは?」という基本的なテーマを、徹底的に深掘りしました。これまでの行政のビジネスモデルをDX化すると、なにがどう変わるかについて具体的な事例にもとづいて解説したのです。この研修によって、職員からは「はじめてDXの意味がわかった」という声が多く寄せられました。
自治体職員のマインドセットを高めるのも、「デジタル専門人材派遣制度」の役割の1つです。
自治体DXを成功に導く人材確保を支援する、民間企業
ここからは、「デジタル専門人材派遣制度」に限らず、自治体DXを推進できる人材の育成や外部の人材の確保を、さまざまな角度から支援する民間企業をご紹介します。
自治体の課題を解決に導くため、DXを推進できる専門的な知見のある人材を紹介し、支援します。アドバイスにとどまらない実働型支援にこだわり、これまで支援したプロジェクトは、1万件を超えています。自治体に限らず、多くの業界、業種でDXの経験を持つ、研修の不要な専門家が登録中で、課題に合わせた柔軟な契約形態も魅力です。
グループウェアとして有名なサイボウズは、自治体のDX化を支える人材支援プログラムも充実しています。住民サービスや業務の自動化にはキントーン、庁内の情報共有にはサイボウズと、民間企業に人気のプラットフォームを自治体向けにカスタマイズ。さらに、社会課題に取り組む自治体支援のスペシャリストが支援する地域共創支援サービスも提供しています。
自治体DXの研修には欠かせない、Eラーニングプラットフォームを提供しています。自治体の一般職員に向けたDXリテラシーに関する動画から、Pythonなどのプログラミング言語や先端技術に関するものまで、コンテンツも充実。オンラインでデジタル技術を習得できるのに加え、人材育成の進捗管理機能も備えており、これまで10万人以上のユーザーに利用されています。
自治体に、海外の優秀な人材を迎え入れる人材マッチングサービスを提供しています。現在の登録者数は136カ国30万人。2019年からは、DXを推進したい自治体の慢性的な人材不足を解決すべく、同社のシンクタンクが収集したデータを駆使して、DXを含めたIT人材マッチングサービスを提供。現在、国内トップレベルの政府案件受託実績を誇っています。