オンラインで開催されるセミナーや展示会などのイベント、「オンラインイベント」はコロナショックによって急速に普及しました。これまでリアルな会場に人を集めて対面型で開催していたイベントが、動画配信ツールやWeb会議ツール、オンラインイベント向けプラットフォームなどを活用した非対面型のイベントへと移行したのです。これまで対面型のイベントを開催したことがない企業も、オンラインイベントへの参入を始めています。
オンラインイベントを開催するには、「プラットフォーム」と呼ばれるシステムを利用した方がイベントの成功率/完成度を上げることができます。動画配信などの基本的な機能を備え、オンラインイベントの基幹システムとして機能するプラットフォームは、オンラインイベントが普及してきたのに伴って日に日に進化を遂げています。
オンラインイベントを開催するには、どのような手順で進めれば良いのでしょうか? また、オンラインイベントの成功の鍵を握るプラットフォームにはどんなものがあり、どのような基準で選ぶと良いのでしょうか?
この記事では、オンラインイベントの開催を検討している企業担当者に向けて、オンラインイベントの企画についての考え方から、無料から有料まで、目的に合わせて選べるオンラインイベント向けプラットフォームの比較まで、必要な情報をお届けします。
オンラインイベントのメリットとデメリットを知る。
オンラインイベントは、その名のとおり、Webを利用してオンライン上で開催するイベントです。販促イベントや展示会、あるいは転職相談会や会社説明会、そして株主総会まで、これまで対面で行ってきたイベントを、オンラインで開催します。
1. オンラインイベントのメリットとは?
オンラインイベントのメリットは、おもに次の3つです。
●コストが削減できる
オンラインイベントには、リアルイベントでは必要不可欠であった、会場費用やイベント当日に稼働するスタッフにかかる費用を大幅に抑えられます。
リアルイベントの運営では大きな割合を占める会場費や人件費と、オンラインイベントを開催するためのカメラなどの機材購入費やプラットフォーム利用料を比較すると、オンラインイベントの方が費用がかからないと感じるでしょう。
●場所を問わず集客できる
オンラインイベントは、地域やキャパシティ、時間などの条件に制限されることなく集客が可能です。
例えば、地域。これまではイベント会場から遠隔地に住む人々が参加することは難しいものがありましたが、オンラインでは参加者の居住地は問題になりません。場合によっては、海外からの参加も可能です。
また、イベント会場の収容人数にとらわれることもありません。オンラインイベントに最適なWebサービスやプラットフォームを使えば、何万人という規模で参加者を募ることも可能ですし、ライブ配信だけでなく、イベント後も視聴できるアーカイブ視聴を可能にすることで、時間の制約もなくなります。
●イベント後のフォローが容易
オンラインイベントは、Webツールやプラットフォームを活用するため、プラットフォームと連携した分析ツールを使うことで、参加者の属性やニーズをデータとして把握できます。イベント後も、メールマーケティングなどデータに基づいた営業活動が可能で、フォローアップもオンラインでスマートに実現できます。
2. オンラインイベントのデメリットとは?
オンラインイベントのデメリットは、おもに次の2つです。
●離脱率が高い
オンラインイベントでは、集客からイベント開催、フォローアップまで、すべて非対面で完結する利便性がある一方で、リアルイベントで得られる共感や感動、一体感といったユーザー体験が得にくいところがあります。ユーザー体験が薄いと、イベントに参加しても離脱率が高い傾向があります。
●システムや通信のトラブルが発生することがある
オンラインイベントでは、通信環境などによってITの問題が起きることも少なくありません。主催者側の通信や機材トラブルにより、イベントが突然中断してしまうこともありますし、参加者側のITリテラシーによって「見えない」「聞こえない」といった不測のトラブルが発生することもあります。
3. オンラインイベントの未来とは?
オンラインイベントが急増しはじめた2020年7月、NTTデータ経営研究所は「オンライン・ファースト社会」というキーワードを掲げました。オンラインでのビジネスを、リアルな活動と同じ価値を持つ「新しいリアル」としてとらえる考え方で、ウィズコロナ戦略の一環として誕生しました。この提言には、オンラインイベントだけでなく、リモートワーク、デジタルマーケティングなども含まれています。とはいえ、ビジネスのすべての工程をオンライン化するには時期尚早で、さまざまな課題もあります。
現段階で考えられるオンラインイベントの近未来は、対面と非対面、すなわち、リアルとオンラインのハイブリッド型が主流になるといわれています。
オンラインイベントを準備する
オンラインイベントを開催するための準備は、リアルイベントの準備と重なる部分と異なる部分があります。初めてオンラインイベントを開催するときには、どのような準備が必要でしょうか。開催までの手順を見ていきましょう。
1. オンラインイベントの企画を考える
オンラインイベント運営の第一歩は、企画からはじまります。企画の基本的な考え方はリアルなイベントと同じですが、オンラインイベントでは会場を選ぶ代わりに、プラットフォームの選定が大きなポイントになります。
プラットフォームの選定に入る前に、まずはオンラインイベントの企画を「5W1H」で書き出してみましょう。「いつ?(WHEN)」「どこで?(WHERE)」「だれが?(WHO)」「なにを?(WHAT)」「なぜ?(WHY)」「どのように?(HOW)」というポイントを箇条書きにするのです。
●オンラインイベントの「5W」
- 「いつ?」 ➡ 配信のタイミング
- 「どこで?」 ➡ プラットフォーム
- 「だれが?」 ➡ スタッフィング
- 「なにを?」 ➡ コンテンツ
- 「なぜ?」 ➡ コンセプト
- 「どのように?」 ➡ 総合的なプロセス
「いつ?」と「どこで?」は、オンラインイベントのプラットフォーム選びと密接に関係しますので、次の「 2. オンラインイベントのプラットフォームを検討する」で詳しくご紹介します。
まずは、リアルイベントにも共通する「だれが?」「なにを?」「なぜ?」「どのように?」の部分を構築していきましょう。
「だれが?」というのは、イベントを運営するスタッフを意味します。「会社」という漠然としたセグメントではなく、特定の部署や担当者、あるいはイベントのために部門を横断して編成されたプロジェクトチームなど、主催者(スタッフ)の立ち位置を明確にします。
「なにを?」というのは、「誰に向けたどのような内容のイベントなのか」という意味です。つまり、オンラインイベントに集客したいターゲットと、そのターゲットに向けたイベントの中身を考えます。たとえば「既存顧客向けの販促イベント」と「見込み客向けの新規サービス提案」では、「なにを?」は変わるはずです。
「なぜ?」とは、イベントを開催するためのコンセプトです。ターゲットとイベントの中身が固まるのに比例して、オンラインイベントのコンセプトも明確になっていくことでしょう。
オンラインイベントでは、コンセプトに基づいて、スタッフィングを行いたいところですが、現実には、スタッフが先に決まってからコンセプトへ落とし込むケースのほうが多いかもしれません。そして、それらを総合して「どのように?」進行していくのかを決めていきます。
2. オンラインイベントのプラットフォームを検討する
オンラインイベントのスタッフィング、ターゲットとコンテンツ、そしてコンセプトが見えてきたら、Webツールを含めたプラットフォームの選定に入ります。
オンラインイベントにおけるプラットフォームとは、イベントの基幹システムとなるインフラそのものです。たとえば、リアルイベントにおける会場選びでも、貸会議室で行うのか、ビックサイトなど大規模な会場で行うのかによって異なるように、オンラインイベントでもプラットフォームがイベントそのものを大きく左右します。
プラットフォームを検討するにあたり、さきほどの「5W1H」を、もう一度確認しておきましょう。
- 「いつ?」 ➡ 配信のタイミング(ライブ配信? アーカイブ配信? ハイブリッド配信?)
- 「どこで?」 ➡ プラットフォーム(通信環境、セキュリティ、参加人数)
「いつ?」は、いわゆる開催日時です。リアルイベントでは、いつ会場を押さえることができるか、といった外部要因が日時決定に影響しますが、オンラインイベントでは、ターゲットへの動機づけや主催者の都合で開催日時を決めることができます。
オンラインイベントでは、むしろ、一度きりのライブ配信かアーカイブ視聴も含めるかという点を考えておきたいところです。
もしくは、イベントの冒頭と終わりはライブ配信にして、その合間には事前に作っておいた動画を流すという配信スタイルもあります。こういった配信のタイミングやスタイルによって、オンラインイベントのプラットフォーム選びも変わってきます。
「どこで?」というのは、プラットフォームのインフラを意味します。そのイベントでは、何人ぐらいの集客を想定しているでしょうか。数十人なのか、数百人なのか、集客数によって、プラットフォームも変わってくるのです。
オンラインイベントで考慮すべき点は参加人数以外にも、以下のようなものがあります。
- スピーカーと参加者だけでなく参加者同士のコミュニケーションは必要か?
- イベント離脱率を何%に抑えたいか?
- 参加者のITリテラシーはどのレベルか?
- 通信環境やセキュリティはどのぐらい重きをおくか?
- スタッフが日常的に利用するWebサービスとプラットフォームとの相性は?
- プラットフォーム利用時にサポートは必要か?
これらのことも検討して、それぞれに強いプラットフォームを選択していきます。
たとえば、リアルイベントとのハイブリッドを目指しているのであれば、スピーカーが一方通行で話しかけるのではなく、参加者同士が相互コミュニケーションを取れるプラットフォームが求められることでしょう。
オンラインイベントのプラットフォームは、ほとんどの場合、無料で試すことができますので、上記の点を考慮しながら、気になるプラットフォームを無料で試していくというやり方が近道かもしれません。プラットフォームごとに機能が比較できるだけでなく、オンラインイベントについてのナレッジも蓄積されていきます。
3. オンラインイベントの集客を考える
オンラインイベントですから、集客もオンラインで行います。
- Twitter、Facebook、TikTokなど、どのSNSを主戦場に広告を打つか
- リスティング広告、ディスプレイ広告、記事広告など、どんなWeb広告を使うか
- どんなインフルエンサーに告知してもらうか
- ランディングページを作るのか、既存のオンラインイベントWebサイトを利用するか
これらを複合的に組み合わせて、ターゲットに合わせた戦略を練る必要があります。
オンラインイベントの目的別、おすすめのプラットフォームは?
このように、オンラインイベントの成功は、プラットフォーム選びにあるといっても過言ではありません。いまや Zoom や Google Meet、Microsoft Teamsなど有名なプラットフォームだけでなく、ユニークな機能をもったプラットフォームが各社から提供されています。ここでは、オンラインイベントの用途からプラットフォーム選びの考え方をご紹介しましょう。
1. 「Web会議」スタイル
オンラインイベントの中でも、一番シンプルな使い方が「Web会議」でしょう。リアルな会議室をオンラインに移行して、さまざまな用途でオンラインイベントを開催できます。
「Web会議」スタイルでは、主催者と参加者のコミュニケーションはもちろんのこと、必要に応じて、参加者同士でコミュニケーションを取ることも求められます。
実は、この参加者同士の相互コミュニケーションが「Web会議」のウィークポイントなのです。物理的に同じ空間にいて参加者同士が気軽に会話できるリアルイベントと比較すると、オンラインイベントでは、どうしてもきめ細かなコミュニケーションが取りづらい傾向があるからです。この場合、リアルイベントのような感覚でオンラインイベントが利用できるプラットフォームを選ぶと、参加者の離脱を減らすことができます。
また、イベント後に、参加者の属性などのデジタルデータをマーケティングに活用したい場合は、データ管理ができる機能や分析ツールとの連携が可能なプラットフォームを選びます。
2. 「ウェビナー」スタイル
オンラインイベントの中でも、もっともリアルイベントに近いのが、「ウェビナー」スタイルです。ウェビナー(ウェブ+セミナー)という名のとおり、セミナーを開催する主催者(スピーカー)と、それを聴講する参加者という構成です。このスタイルは、セミナーに限らず、バーチャル展示会や就職イベントなど、プレゼンテーションをするオンラインイベントに向いています。
「ウェビナー」スタイルでは、プラットフォームに、参加者にアンケートをとったり、質疑応答ができたりと、主催者と参加者が相互コミュニケーションを取ることができるサービスや機能が付帯されていると、参加者の離脱を防ぐことができます。
3. 「動画配信」スタイル
オンラインイベントの中でも、リアルタイムのライブ配信ではなく、事前に作りこんだ動画を配信する形式が「動画配信」スタイルです。たとえば、事前に商品の機能紹介やプロモーションの動画などを作成しておき、オンラインイベントの進行はライブ配信しながら、その合間に事前に作った動画を配信するといった流れです。主催者は、すべてをライブで話さなければならないというプレッシャーから開放されます。参加者にとっても、イベントのコンテンツが豊富で、飽きないというメリットがあります。
このようなライブ配信とアーカイブ動画を組み合わせたイベントの場合、プラットフォームに求められるのは、サポート体制の有無です。配信環境や使用機材など、実際の運用で困ったときにサポートが充実しているかどうかは大きなポイントです。
オンラインイベント用プラットフォーム おすすめ4選
ここからは、目的別にオンラインイベント用プラットフォームをご紹介しましよう。
ウェビナー開催なら……Zoomビデオウェビナー(米)
オンライン会議システムZoomの中でも、Zoomビデオウェビナーは特にウェビナーに特化した有料のアドオンです。最大1万人まで集客可能で、大規模なオンラインイベントの運用に向いています。メジャー系プラットフォームらしく、参加者へのアンケート機能や投票機能などのデジタルマーケティングと連動したオプションも充実しています。
高画質でにこだわるなら……Vimeo(米)
オンラインイベント用の動画制作から配信までワンストップで行える、プラットフォームです。Googleアナリティクスなど、さまざまなデジタルマーケティングサービスとの連携も容易で、プラットフォームのなかに、必要な動画ツールが集約されています。
一般動画共有サイトではじめてHDという高画質動画を採用したことでも有名で、いまも多くのクリエイターに支持されています。
ユーザビリティを上げるなら……remo(香港)
remoは、オンラインイベントのプラットフォームとしては2020年に創業した後発組でありながら、これまで378万件のイベントを開催しています。
オンラインイベントをリアルなユーザー体験に近づけるために、ブラウザ内にあるオンライン会場をカスタマイズしたり、企業のロゴを掲載したりできるようになっています。また、参加者同士でコミュニケーションがとれる個室チャットなどの仕掛けも充実しています。
[PR]充実した国産サポートなら……galimo (日本)
転職イベント、展示会など対面型イベントの運営実績に基づき、リアルイベントのような感覚でオンラインイベントが運用できるようにデザインされた、日本製のプラットフォームです。
企画に合わせてイベント画面を自由にカスタマイズでき、オンラインイベントの課題である「離脱のしやすさ」を防ぐために、心理学に基づいた導線設計がなされています。また多くのプラットフォームが外資のなか、国産ならではの丁寧なサポートも大きな魅力です。