日本でも「DX化」の推進が叫ばれるようになりました。しかし、中小企業では特に、DX化に対しさまざまな問題を解消することができず、推進が遅れてしまっているという現状があります。
そのような中で、独自の工夫や制度設計などで、DX化推進に成功した中小企業も存在します。
今回は、これらの中小企業のDX化推進への取り組みや成功事例について、全国中小企業クラウド実践大賞2020で表彰された3社の事例を紹介していきます。
【独自システムで業務効率改善】
介護サービスを自社で開発。業務時間を85%も削減|さくらコミュニティサービス
独自システムを開発した背景
2002年創業のさくらコミュニティサービスは、北海道に本社を置く企業です。介護事業を主要として事業活動を行っていますが、介護事業の労働集約型を起因とした生産性の低さを課題としていました。
生産を上げるためには人材に頼らざるを得ない状況がある一方で、介護以外の事業との兼ね合いも重なり、思うように人材確保が進まないことを苦慮していました。
さらには、人材不足による既存社員の残業時間の増加、紙媒体の保存作業などにも悩まされており、これらの諸問題を解決するためにDX推進に舵を切ったという経緯があります。
独自システムをどのように導入・運用したか
導入に至るまで
社内のDX化推進に対し、まずは既存のクラウドサービスを探しました。しかし、
- 初期費用とランニングコストが高い
- 報酬計算に特化したクラウドサービスが多く目的とマッチしない
- カスタマイズしにくい
などの問題点があり、導入には至りませんでした。
そこで、自社で開発することになったわけですが、開発において重要となる三要素の「人材」「資金」「ノウハウ」のすべてが、当時のさくらコミュニケーションサービスには不足していました。
解決策を模索した結果、経済産業省が主管していた商業・サービス競争力強化連携支援事業を利用することで開発に着手。官民で連携しながら、開発から2年後には自社内に拠点を設け、北海道以外の地域に住むクラウドワーカーの力も借りながら、自社開発システム「CareViewer」が2019年に無償公開、2020年には有償公開となりました。
どのように運用しているか
自社開発に成功したCareViewerですが、主な機能は、介護におけるさまざまな記録を管理するところにあります。
内訳は「ケア」「バイタル/観察」「看護」「生活援助」「リハ/通所/通院」で、記録を保存することで、介護の中でのさまざまなタスク、たとえば介護保険更新や要介護認定更新の時期を通知する機能なども実装されています。
また、多言語対応で音声入力も可能なことから、外国人従業員も負担なく利用でき、コミュニケーションも円滑になるという利点があります。
さらには中小企業向けビジネスチャットツールである「Chatwork」との連携により、要介護者と家族がオンラインで面会できるようにもなっています。
独自システム導入・運用して得られた成果
1. 残業時間大幅削減
CareViewer導入前は介護記録にかかわる年間残業時間が5400時間だったのが、導入後は年間810時間となり、85%削減できました。目に見えて生産性が上がった項目のひとつです。
2. 経費削減
CareViewerを導入しデジタル化したことで、紙代や保管コストなど紙に関する経費を年間300万円削減できました。また、コピーを取る時間や年度書類の整理時間なども削減できています。
3. ソフト売上が発生
CareViewerの導入から3か月で全国570カ所の事業所で利用されており、その売上は年間約1億2900万円(2021年1月現在)を見込んでいます。自社開発だからこその利益といえるでしょう。
4. 職員同士のコミュニケーションが円滑に
CareViewerのおかげでタスク管理が容易となり、さまざまな通知機能もあるため、職員同士のコミュニケーションも円滑となりました。
クラウドサービスの活用でコロナ禍でも業績アップ!|ロゴスホーム
システムを導入した背景
株式会社ロゴスホームは、北海道帯広市で創業した住宅メーカーです。2019年度まで、業績は右肩上がりでしたが、中長期的に見たときの「人口減による住宅着工件数の減少」による業績低下をどうするのかが喫緊の課題でした。
今後の生存戦略として「多岐にわたる分野での効率化」「ストック型ビジネスの強化」の2点に注力する必要性を感じたロゴスホームは、解決策としてクラウドシステムを導入して横断的に顧客関係管理(CRM/Customer Relationship Management)を円滑に運用しようと考えたのです。
DXをどのように導入・運用したか
ロゴスホームでは、主にCRMソリューション大手の「Salesforce」を用いてさまざまな業務を管理しています。具体的には、以下のような活用をしています。
紙媒体からWeb媒体へ広告をシフト! Salesforceで管理を一元化
まず、広告関連において、紙媒体による広告からWeb媒体による広告にシフトしました。導入前までは、いくつものExcelファイルで紙媒体広告に関するデータを管理することは作業が煩雑でした。
しかし、Salesforceを導入した後は、アプリケーションへの入力と、Googleスプレッドシートからのインポートした情報で、広告費用や費用対効果などのデータをわかりやすく一元化することができました。
ToDoリストと自動化で営業を効率化
広告で反響が増加すると、社員の負担が次第に増加し、案件管理が難しくなってきます。
そこでSalesforceを活用して、案件の仕分けをし、To Doリストの自動化で業務を明確化し、長期案件は組織で管理することにしました。業務の属人化を減らすことができ、案件漏れの防止に役立っています。
さまざまなクラウドサービスを複合的に運用!
Salesforce以外にも、「Chatwork」や、オンラインミーティングツールの「Zoom」などのクラウドサービスを複合的に用いることで、オンライン会議やリモートワークへの移行もスムーズに行えました。
DXを導入・運用して得られた成果
1. 集客数、成約数、成約率アップ
コロナ禍により、リアルの住宅展示場への来場や対面での商談を制限せざるを得ない状況でも、Salesforceを用いて無駄のないWeb広告の運用と、案件漏れを防ぎ、組織全体でカバーすることが可能になりました。そして、集客数は前年比で143%、商談数は173%、成約率は1.6%アップすることができました。
クラウドシステム導入で職員全員が在宅勤務可能に!|税理士事務所マッチポイント
DXを導入した背景
税理士事務所マッチポイントのモットーは「日本一の税理士事務所を作る」。そのモットーを実現するために、事務所全体の働き方改革にも積極的に取り組んでいます。
その一環となっているのが、設立当初から行っているさまざまなクラウドサービスの導入です。
DXをどのように導入・運用したか
ChatworkやZoomでコミュニケーションや社風作りを円滑に!
コロナ禍により、在宅勤務が多くなったマッチポイントではChatworkとZoomを活用しています。
Chatworkは社内外のコミュニケーションに用いて、顧客とのやり取りをすべてChatworkで行い、社内での報連相をリアルタイムに行えるようにしています。またZoomは勤務中は常時接続し、何か不明点や相談事がある場合はすぐにほかの社員に聞くことができるようになっています。
このように、在宅勤務でもDX化を推進することで社風作りやコミュニケーションを円滑に行える環境が整えられています。
バックオフィスのクラウド化
バックオフィス業務については、前述したクラウドサービスのほかに「マネーフォワード」「クラウドサイン」なども複合的に運用して、在宅勤務でも問題なく業務が遂行できる環境を整えました。
DXを導入・運用して得られた成果
ペーパーレス化やオンライン面談により業務時間の削減に成功
バックオフィスや営業にて、さまざまなクラウドサービスを導入した結果、ペーパーレス化と移動時間の圧縮が進み、業務時間の削減に成功できました。